レーザー加工機(ゴム印加工用途)のオーバーホール

当社のユーザー様ではないのですが、レーザー加工機のオーバーホールを依頼されましたので、早速作業に取り掛かりました。
主たる加工がゴム印彫刻なので、もっともメンテナンスを必要とします。

なぜかというと、プラスチックや木材加工の場合、ある程度は噴煙として排出されるのですが、ゴム印の場合は、ほぼ粉塵のみで、この粉塵のサイズが比較的大きく、駆動系パーツや光学系部品に堆積してしまうからです。


作業開始前です。一見綺麗に見えますが・・・


中を見ていくと、細かいゴムの粉塵が堆積しています。


レーザー発振器を外してみると・・・加工スペースとは壁で仕切られていて、通常は入るはずのない部分にもゴムの粉塵が見受けられます。これは、おそらく集塵脱臭装置が充分に吸引できておらず、仕切りの隙間から入りこんだものと思われます。 


サイドパネルを外してみると、大量にゴムの粉塵が溜まっています。


フィルター交換が前提とはいえ、ここまで粉塵が溜まるのは、もしかすると集塵装置に組み込まれている送風機の静圧が低い可能性もあります。 集塵装置は、どれほど風量が多くても、静圧が低いものは粉塵の多い加工には向きません。なぜなら静圧が低い集塵装置は、フィルターが詰まりだすと一気に吸引能力が下がるからです。 フィルターに依る集塵を行わない(圧力損失が小さい)場合は、静圧が低くてもそれほど問題ではありません。(例えばアクリルの切断など、粉塵の発生が少ない加工)


付着した粉塵があまりに多いので、今回は特別にプロッターアームを取り外しました。


X軸アームとY軸レールを繋ぐホイールやベルトプーリーもゴムの粉塵で動作が渋くなっています。


こういった稼働部位は、全て部品を外して清掃・グリスアップを行います。


フォーカスキャリッジユニットの裏側です。もちろん、こういった部位はパーツを分解しないと清掃が出来ません。


取り付けられているパーツを、全て外していきます。


ゴムの粉塵・汚れは、ケミカルによる洗浄では落としきれないので、水洗いが可能な部品は水と洗剤で洗浄していきます。(水と洗剤による洗浄は時間と手間を要するため、オーバーホールのオプションプランとなっています。)


外装部品も、全て分解して洗浄します。




小さな部品も、ひとつひとつ丁寧に清掃し、必要な箇所にグリスアップを行います。







水洗いが出来ない部品も、綿棒を使って丁寧に汚れを取り除きます。




稼働頻度の高いX軸ベルトは新品に交換します。 よく見ると、ベルトの山が痩せているのがわかります。これは、ベルトに溜まった粉塵が研磨剤の役目を果たして、ベルトを削ったためです。


フォーカスキャリッジのベースプレートに、新しいベルトをしっかりと取り付けます。


ベースプレートをプロッターアームに組み付けて・・・


ベルトテンションを調整します。


プロッターアーム周りが終わったら、筐体内部の清掃を行います。 ここは排気プレナムで、いちばん汚れが酷いところです。 ゴムの粉塵が層をなして堆積しています。


Y軸レールも丁寧に清掃します。


ゴムの粉塵がレーザー発振器周りにも漏れ出していたので、念のため、電装カバーを外して電装パーツ周りの粉塵を掃除機で吸い取ります。


火災検知用温度センサーにもゴムの粉塵がこびり付いていたので、取り外して清掃します。


ひと通りの洗浄が終わったので、筐体にプロッターアームを組み付けます。


プロッターアームを取り付けた後、X軸とY軸のアライメントを調整します。


清掃が終わった後のサイドビューです。


Z軸テーブルの水平調整を行い、昇降用スクリューシャフトのグリスアップを行います。


トップドアーも見違えるほどきれいになりました。


取り外して洗浄してあったビームウィンドウを取り付けます。


レーザー発振器を取り付けて、


光軸調整を行います。もちろんレッドポインターによる調整ではなく、実際のレーザーを照射して光軸を合わせます。


光軸調整が終わったら、プロッターアームカバーを取り付けて完成です。




すべての作業終了後、テスト刻印を行います。 画像は6ポイントのアルファベットをアルマイトアルミ板へマーキングしたものをデジタルスコープで拡大したものです。文字がシャープにブレなく刻印出来ています。小文字の【j】の小さな点も、綺麗に刻印できています。


ということで、レーザーを長くお使いになるのであれば、定期的なオーバーホールをお勧めします。 ちなみに、今回のオーバーホールは通常の3倍近い時間を要しました。